健康経営の進化

エルダー7月号に「健康経営の進化」について、書かれてありましたので、その一部を紹介します。
健康経営の考え方はアメリカの「ヘルシーカンパニー」に由来します。米国の経営心理学者のロバート・ローゼンが1980年代に「健康な従業員こそが収益性の高い会社をつくる」というヘルシーカンパニーという考え方を掲げ、経営的視点から、日本で初めてNPO法人健康経営研究会が体系化しました。

前記のローゼンは、健康な従業員はパフォーマンスも高いと主張し、不健康だと従業員の能力が発揮されないことから健康管理の重要性を指摘しています。その一方で、アメリカでは健康を害し、仕事ができない人を解雇できる法律があります。企業は従業員の健康づくりの支援はしますが、健康状態が悪い人は取締役や管理職になれません。なぜなら管理職になったとたん心筋梗塞などで亡くなってしまうと、それまでの投資が無駄になるからです。



しかし日本では解雇権濫用法理があり、合理的理由なく辞めさせることはできませんし、入社してから退職まで雇用し、健康保険組合が疾病などを中心に健康をサポートしています。一方で、健康診断など莫大な健康管理費用を費やしているにもかかわらず、健康診断の有所見率は増加傾向にあり、「やりっぱなし・ほったらかしの健診」といわれることもあるように、投資に対してリターンを求めていないというおかしな状況でした。そこにメスを入れて健康の持つ事業性を経営者がしっかりと認識し「投資をしている以上リターンを求めるべきだ」というのが健康経営の最初の発想で、2006年、同法人が取り組みを開始しました。その後は、政府の後押しもあり、健康経営の考え方は広まっています。

人生100年時代を迎え、今回の提言では、人生100年時代に経営者が考えていく課題として、①人的資本の変革、②高齢化の進化(生涯現役社会の構築)、③共創社会の実現、の三つを掲げています。そして、これから健康経営に取り組む担当者へ向け、次のようなアドバイスをしています。

まず自社にどんな課題があるかを把握することです。企業や業種によって課題は異なります。何が最も重要な課題なのかを評価しなければ効果が期待できません。自社の課題を発見するためには、例えば、協会けんぽから送られてくる特定健診のデータを利用するのも一つの方法です。課題を発見したら改善するためにはどうすればよいかを考えて具体策を実践し、さらに結果を検証するという流れが健康経営には不可欠です。

また、個人のへルスリテラシー意識を高めるには、経営者自身から「わが社の未来にとって一人ひとりの健康が非常に大切だ」と従業員に伝えることです。特に中小企業の場合は一人ひとりの従業員がそれぞれの職場で大切な役割をになっていますし、今後は高齢従業員を含めて一人でも欠けることは経営にとっても厳しくなります。従業員をだれ一人として取り残さない健康経営に取り組んでいただくことを期待していますと、同法人の理事長岡田邦夫氏が語っています。



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