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お前はまだあの女を抱いているのか。

学び : 2022年02月08日(火)
この言葉は、河合隼雄の著書「ユング心理学と仏教」、禅僧の物語の一節である。河合氏がカウンセラーと相談者(クライアント)との関係性を示したものだで、今でも印象に残っている。

二人の僧が 旅に出て、川に行き当たった。橋も船もなく 渡るためには川へ入らなければならない。

そこに、美しい女性が 向こう岸に渡れず困っていた。すぐに 一人の僧が彼女を抱いてその川を渡った。そして、向こう岸で彼らは別れた。

しばらく歩いていると一人の僧が 口を開いた。「お前は僧として あの若い女性を抱いてよかったのかと俺は考え続けてきた。あの女性が助けを必要としていたのは明らかにしてもだ」。
もう一人の僧は答えた。「確かに 俺はあの女を抱いて 川を渡った。そして、川を渡った後で彼女をそこに置いてきた。しかし、お前はまだあの女を抱いているのか」と。

このエピソードは 河合のクライアントに対する姿勢を示している。必要な時には 全身全霊で向き合いそのあとは 一切執着しない。こうした関係を非個人的関係と呼び河合は それを理想とし目指した。
河合は この僧の姿から風のイメージを連想したという。

河合 隼雄(かわい はやお、1928年6月23日 – 2007年7月19日)

日本の心理学者・心理療法家・元文化庁長官。

京都大学名誉教授、国際日本文化研究センター名誉教授。文化功労者。